ものがたり

ロンドの星を旅する、小さなカフェがあります。 バイクにカートを繋いで、今日も三人――廻り者のヒヨリ、黒猫のクロ、そしてクラゲのみなもが、気ままに道をゆきます。 風をあびながら、次の街へ向かう途中のことです。 ヒヨリ 「クロさん、見てください。あの雲、なんだかパウンドケーキみたいです」 クロ 「ほんとだ。……でも味はなさそうかな?」 ヒヨリ 「ふふ、どうでしょう。もしかしたら、おいしいかもしれませんよ?」 みなもが、ヒヨリの帽子に掴まりながら光を揺らす。 それが笑っているみたいで、ヒヨリもつられて微笑んだ。 クロ 「次の場所には、どんな人たちがいるかな」 ヒヨリ 「たぶん、甘いものが好きな人たちですよ」 クロ 「じゃあ、ケーキとお茶が喜んでもらえそうだね」 カートが風の音を奏でながら進んでゆく。 道の先に、淡く光る街の輪郭が見えた。 クロが小さく伸びをして、目を細める。 ヒヨリは短く息を吸い、前を見つめた。 ヒヨリ 「風が、少し甘くなりましたね」 クロ 「ほんとだ。あの街、ボクたちを待ってるのかも」 ヒヨリはうなずき、みなもは瞬く。 その時、みなもからこぼれた光が、カートの看板をふわりと照らした。 “にゃあと揺れる傘”の文字が、光の中で誇らしげに浮かび上がる。 ケーキとお茶、そして少しの物語を携えて、 今日も、ロンドの星をのんびりと旅をする。